24社・24名で「ASV講習会」― 先進安全技術&エーミング作業を学ぶ

この記事のポイント(要約)
- 2022年6月29日、愛知県自動車整備振興会(愛整振)の小牧教育センターで、検査委員会主幹の令和4年度「ASV(先進安全自動車)講習会」を開催。1社1名限定で24社24名が参加。名古屋の最高気温が観測史上最高の37.5度に達した猛暑日だった。
- 第1部の座学(天野稔紀講師)で運転支援・自動運転技術、衝突被害軽減ブレーキ、赤外線レーザー・ミリ波レーダー・単眼/ステレオカメラなどの各種センサーを学習。第2部の実習でプリウス(ZVW50)とスキャンツールを使ったエーミング(光軸調整)作業を3名の講師陣が実演した。
- センサーはバンパーやガラスを外すだけで数ミリずれ、先進安全装置の機能・安全性に誤差が生じる。ズレを修正するエーミングはASVの普及とともに重要性が増す。令和元年12月以来、2年7カ月ぶりの2度目の開催となった。
24社24名で開催 ― 全国トップクラスの施設で最新のASVを学ぶ
検査委員会主幹による令和4年度「ASV(先進安全自動車)講習会」が2022年6月29日、一般社団法人愛知県自動車整備振興会(略称・愛整振)の小牧教育センターで開催されました。愛整振加盟の整備工場と同様の全国トップクラスの施設・設備を備えた同センターで、実際に整備士・検査員教育に携わる教員陣からASVの最新情報を学べる貴重な機会となり、組合員店1社1名限定という条件のもと、24社から経営者やサービススタッフなど24名が参加しました(うち2社2名は当日キャンセル)。
大塚検査委員長と新井検査副委員長が見守る中、座学講習では天野稔紀講師からASVの基礎知識を習得し、その後の実習講習では奥村健司氏をリーダーとする3名の講師陣によるエーミング(光軸調整)作業の実演を見学。一連の手順とASVの機能・安全性を確保するノウハウを学びました。この日の名古屋地区の最高気温は観測史上最高の37.5度に達し、会場と駐車場の往復には炎天下の移動を要したこともあって、体感した猛暑がこの日の講習内容と併せて忘れられない想い出になったようです。
交通死亡事故「根絶」の切り札 ― 運転者の「目・頭脳・手足」となって
第1部の座学講習では、交通死亡事故のうちドライバーの不注意や違反行為によるものが96%を占めており(歩行者等に起因するものはわずか4%)、死亡事故を減らすには、ドライバーが安全運転を遂行する上で対応しなければならない「認知・判断・操作」を機械(センサーと装置)に頼るしかないと決断したことからASVの開発が進み、その究極として完全自動運転車(レベル5)の開発が進められていることが、まず説明されました。
衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置、レーンキープアシスト、アダプティブ・クルーズ・コントロール、横滑り防止装置、ふらつき警報装置など運転支援技術を備えたASVには、赤外線レーザー、ミリ波レーダー、単眼カメラ・ステレオカメラなどのセンサー類が装備されています。天野講師は「現在の市販車は自動運転のレベル2〜3がトップで、レクサスなどは20種類のセンサーを備えたものもある。センサー装備のバンパーやガラスを取り外すだけでセンサーに数ミリのズレが生じ、本来の機能や安全性に大きな誤差が生まれる。メーカーサイドはASVのローダウンを認めていない」と強調しました。
センサーのズレが安全性を左右 ― だから「エーミング」が要る
天野講師は「センサーや装置のASV技術はメーカーごとに異なり、センサーは車種ごとに組合せや採用個数が異なる。それぞれの特長を把握し、先進安全装置を的確かつ確実に作動させるには、センサーのチェックが何よりも肝心で、ズレを修正するには光軸調整(エーミング)を行う必要がある。これからASVがますます進化・普及していく中で、エーミングの重要性はさらに大きくなる」と説明。座学会場は、コロナ禍の中で増築されJU愛知として初めて利用する新しい教育棟の教室で、受講者は新鮮な気持ちで座学に取り組みました。
第2部・実習 ― プリウスで光軸調整(エーミング)を実演
第2部の実習講習では、プリウス(ZVW50)とスキャンツール(外部故障診断機=日立HDM-8000)を教材とし、車両に装備されたミリメーターウェーブレーダーセンサー(ミリ波レーダー)とフォワードレコグニッションカメラ(単眼カメラ)を対象に、事前準備から光軸調整までの一連のエーミング作業が3名の講師陣によって実演されました。ドライビングサポートコンピューターやミリ波レーダーセンサー、単眼カメラ、ウインドシールドガラスの交換・脱着、補機バッテリーのマイナスターミナル脱着などの際に、エーミング作業が必要となります。
準備作業は、水準器で作業場の床面が水平かをチェックし、水糸と下げ振り(先端が尖った重り)で光軸調整に必要な計測・診断ポイント3カ所(A点・B点・C点)を定め、テープでマーキングするというもの。エーミングには水平な床面で、6m×5m(うち車両寄りの2mは高さ50mm以下の金属物なら設置可、残り4mは金属物設置不可)ほどのスペースと、周囲・路面に金属物が無い環境が必要とされました。
「原始的」な準備作業に疑問と自信 ― スキャンツールを使いこなせるか
マーキングなどの準備作業が「エーミング」という名称に相応しくない原始的な作業だったため、受講者の中には「この程度の準備作業で本当に大丈夫なのか」と思う向きも少なくありませんでした。一方で「この程度の作業環境が整えば、うちでも対応できるかもしれない」と淡い期待を寄せる向きもありましたが、準備作業を終えてスキャンツールを駆使して実際に光軸調整を行うシーンを目の当たりにすると、「いま以上にスキャンツールを使いこなせないと、自社独自ではエーミングに対応できないかもしれない」と判断せざるを得ない受講者が急激に増えたように感じられました。
2年7カ月ぶりの2度目 ― コロナ禍を越えてバトンをつなぐ
ASV講習会の座学を初めて採り入れたのは、平成28年11月に小牧教育センターで開催した「新機構講習会」の第2部でした。その後、令和元年12月に愛整振から講師陣を招き、JU愛知オークション会場で第1回の「ASV講習会」を企画・開催。今回はそれ以来2年7カ月ぶり、2度目の開催で、本来は第2回・第3回と続ける予定でしたが、コロナ禍によって延び延びになっていました。冒頭で挨拶に立った大塚検査委員長は、前任の安藤総務委員長(当時の検査委員長)から託されたバトンをようやく受け継げた喜びを表し、愛整振の支援・協力を得て有意義な講習会を開催できる旨をアピール。最後に挨拶した新井検査副委員長は「きょう学んだことを、それぞれの会社やお店でしっかりと役立てて下さい」と呼び掛けました。
実感!「百聞は一見に如かず」― 外注対応の武器にも
実演現場では、受講者から次のような声が挙がりました。「エーミング作業の実演を見学できたことが最大の収穫。聞くと見るとでは大違いで、なぜ作業スペースや環境が細かく定められているのかが納得できた」「専用の作業場を確保できればうちでも対応できるかと感じたが、アジャスティングやリフレクターを車種ごとに揃えるのは、扱い車種の多い専業店には採算面で難しい。組合がスキャンツールのレンタルをしているように、エーミング器材も貸し出してくれたら」「うちでは対応できないかもしれないが、きょう見た内容は外注先と交渉する際に絶対に有利になるし、武器になる」。ASVの進化とともに、エーミングへの向き合い方を各社が真剣に考えるターニング・ポイントとなりました。