愛知県の自動車盗難、機関誌が追った8年
― ワースト1位の危機から減少へ。JU愛知と官民一体の防犯活動の記録
この記事のポイント(要約)
認知件数の推移 ― 誌面が伝えてきた数字
機関誌「あいぶら」に掲載された愛知県の自動車盗認知件数(各年の警察発表・内数)を並べます。
| 年 | 愛知県 | 前年比・順位など | 全国 |
|---|---|---|---|
| 2017年(平成29年) | 1,127件 | 3年連続減少・全国ワースト4位 | 10,213件(4年連続減少) |
| 2018年(平成30年) | 839件 | 前年比25.6%減 | 8,628件(59年ぶりに1万件割れ) |
| 2019年(令和元年) | 681件 | 前年比18.8%減・5年連続2桁減 | 7,143件(前年比17.2%減) |
| 2021年(令和3年) | 745件 | 前年比149.0%・7年ぶり増加・全国2位 | 5,182件(7年連続減少) |
| 2022年(令和4年) | 884件 | 前年比118.7%・7年ぶり全国ワースト1位 | 5,734件(9年ぶり増加) |
| 2023年(令和5年) | 698件 | 前年比21.0%減・3年ぶり減少・ワースト2位 | 5,762件(2年連続増加) |
さらに遡ると、全国の史上ワーストは2003年の64,223件。愛知県も2011年(平成23年)には5,026件、2014年には2,724件という水準でした。2001年に「STOP THE 自動車盗難」を合言葉とする官民合同プロジェクトチームが結成され、JUグループも中販連本部とともに参画。そこから約20年かけて、件数は大きく圧縮されてきました。
減少から一転、2021〜2022年の急増 ― なぜ愛知が狙われたのか
2019年まで順調に減っていた愛知県の件数は、2021年に前年比149.0%の745件へ急増します。誌面は、高価な車両が集中する愛知県が窃盗団にとって「効率良く盗み出せる」狙い目になっていると分析しました。実際、この年の愛知県の被害はランドクルーザー182台(24.4%)・レクサスLX115台(15.4%)・プリウス104台(14.0%)と、ワースト3車種の被害比率が全国平均の2倍以上に達しています。
翌2022年は884件(前年比118.7%)で、2015年以来7年ぶりの全国ワースト1位に。入国規制の緩和で海外窃盗団の活動が再び活発化したことに加え、中古車が海外で高値で売れることを背景に国内の犯罪グループも増加した、というのが誌面の分析です。この年の全国被害車両ワースト5はすべてトヨタ・レクサスでした。
2023年は698件(前年比21.0%減)と3年ぶりに減少し、ワースト1位から2位に後退しました。ただし全国では千葉・愛知・埼玉・茨城・神奈川のワースト5だけで3,203件、全国の55.6%を占める集中状態が続いています。また2023年の検挙率は全国42.7%に対し愛知県は23.8%と低く、「盗まれた車が戻る可能性は低い」という前提で守りを固めるほかありません。
狙われる車種の変遷 ― ランクル・プリウスからアルファードへ
被害車種は年代を通じてトヨタ・レクサスの人気車種に集中しています。
・2016年上半期:プリウスが27%とダントツ。上位5車種(プリウス20系・30系、ランドクルーザー、クラウン、レクサスLS、ハイエース)で全体の54%
・2017年:ランドクルーザー22.0%、プリウス18.0%、レクサスLX・LS・RXが続く
・2019年:プリウス22.3%、ランドクルーザー12.1%、レクサスLX・LS・RX ― 上位5車種で全体の53.2%。名古屋市中区では2か月間にレクサスLXが7台盗まれる事件も
・2023年:車名別盗難台数の全国1位はアルファード700台(前年比212.1%)。ランドクルーザー、プリウス、レクサスLX、ハイエースが続き、キャリイやハイゼットなど軽トラックも海外需要の高まりで増加
海外で高く売れる車が狙われる ― この構図は一貫しており、狙い目の車種だけが時代とともに入れ替わっています。
触媒コンバーター狙いの盗難と、古物商の逮捕
2021年頃には、車両そのものではなく触媒コンバーター(排気浄化装置)を狙ったプリウスの盗難が急増しました。触媒にはプラチナ・パラジウムといった高価な希少金属が含まれており、金属価格の世界的な高騰を背景に、銅線やマンホールまで含む金属類窃盗が全国で急増した時期です。
2021年10月には、盗難車両を買い受けていた古物商許可を持つ自動車解体業者が逮捕されました。押収品の状況から、触媒目的の車両盗難を繰り返していたとみられています。これを受けて警察当局は古物商への立入調査を強化。「盗品は、貰っても、運んでも、保管しても、買っても、売っても犯罪」(刑法257条・盗品等譲受け等)として、古物営業法に基づく本人確認の徹底と、不審な取引の通報が組合員に呼びかけられました。大量のマフラーを扱う相手や身分確認に応じない相手との取引は、盗品流通の入口になり得るからです。
販売店の防犯対策 ― 誌面が繰り返し伝えてきた基本
中古車販売店は商品車両を多数抱えるため、盗難の標的になりやすい業種です。誌面が毎年繰り返し掲載してきた防犯のポイントは次のとおりです。
① キーの管理 ― 商品車・預かり車のキーは、床面に固定した強固な金庫に保管する
② 展示の工夫 ― 展示車両は車間を詰めて運転席に乗り込みにくくし、閉店時は大型車両で出入口をふさぐ。高級車は施錠できるガレージ内に駐車する
③ 建物の守り ― 店舗・事務所のドア・窓・シャッターにはCP錠や複数の施錠設備を設け、防犯カメラ・防犯ガラス・機械警備を導入する
④ 装置の上乗せ ― 純正イモビライザーだけでは不十分。ハンドルロックやホイールロック、ナンバープレート盗難防止ネジなど「ワンプラス防犯対策」を上乗せする(警察は警報装置・イモビライザーの追加装着を効果的と指摘)
情報報奨金制度 ― 通報が検挙につながれば10万円
愛知県では2015年(平成27年)10月から、自動車関連窃盗に関する「情報報奨金制度」を運用しています。自動車盗・車上狙い・部品狙いの現場や、不審な人物・車両を見かけて110番通報し、犯人検挙に結びついた場合、事前審査を経て報奨金が支給される制度です。当初1万円だった報奨金は、盗難が急増した2022年に10万円へ引き上げられ、2024年も継続されています。
JU愛知の役割 ― 業界が防犯の当事者であり続ける
JU愛知は愛知県自動車盗難等防止協議会の一員として(加藤会長が副会長を務める)、官民一体の防犯活動に参画してきました。オークション会場では警察署・防犯協会と合同の啓発活動を受け入れ、毎年の古物管理者講習会では愛知県警の担当官による防犯講習を実施。機関誌でも最新の盗難データと対策を毎年組合員に届けています。
中古車業界にとって盗難対策は、自店の商品を守ることと、盗品を市場に流通させないことの両面です。古物営業法に基づく本人確認を守り、防犯情報を共有する組合の加盟店で車を売り買いすることは、消費者にとっても「その車の出どころ」への安心につながります。