改正古物営業法で中古車販売店の実務はこう変わった
― 「主たる営業所等の届出」「許可番号の一本化」「仮設店舗での買取」
この記事のポイント(要約)
① 届け出なければ、持っている許可が無効になる
改正で最も影響が大きかったのが「主たる営業所等の届出」です。この届出をしないと、それまで持っていた古物商許可が第2段階施行日をもって無効になる、という仕組みでした。
逆に言えば、届出さえ済ませておけば新法の許可を受けたものとみなされ、許可の取り直し(再申請)という煩雑な手続きを避けられます。JU愛知の古物管理者講習会では、愛知県警察本部の石河信吾警部補が「現在の古物商許可が無効となるリスクを避けるため、期限までに所轄警察署へ届出を」と繰り返し呼びかけました。届出先は各警察署(公安委員会)で、届出後に内容の変更が生じた場合は改めて届出が必要です。
いま新規に古物商許可を取る場合は、当然この体系に沿って主たる営業所を定めて申請することになります。当時の「経過措置としての届出」は終わっていますが、「主たる営業所」という考え方が制度の中心に据わったという点は、いまの実務にそのまま残っています。
② 複数都道府県で店を持つなら、許可番号は1本になる
改正前は、営業所のある都道府県ごとに古物商許可を取る必要がありました。愛知と岐阜と三重に店があれば、許可も3つ。改正後は、主たる営業所の所在する都道府県の公安委員会が出す1つの許可に一本化されます。
そのための手続きが「新許可証交付申請」です。誌面が挙げていた必要書類は次の3点でした。
① 新許可証交付申請書(愛知県警察本部のホームページからダウンロード)
② 旧許可証一覧表(同じくホームページからダウンロード)
③ すべての営業所の旧許可証(返納する)
ここで重要なのが対象範囲です。誌面は繰り返し「対象は複数都道府県に展開している事業者に限る」と念を押しています。愛知県内だけで複数店舗を持っている場合や、1店舗のみの場合は対象外です。この線引きを取り違えて不要な手続きをしたり、逆に該当するのに放置したりしないよう、講習会でも何度も確認されました。手続きを怠った場合は10万円以下の罰金が科される可能性がある、と案内されています。
③ 番号が変われば、プレートも従業者証も作り直し
見落とされやすいのが、許可番号の一本化に伴う物理的な作り直しです。
古物商標識(店頭に掲げるプレート)と行商従業者証には、旧許可証の番号が記載されています。番号が新しいものに一本化された以上、これらは新番号のものに作り直さなければなりません。グループ内の全営業所で、主たる営業所を管轄する公安委員会から与えられた番号に統一する必要があります。
一方、「JUオークションメンバーカード」は許可証番号が記載されていないため、作り直しは不要でした。こうした「どれを作り直し、どれはそのままでよいか」という実務の切り分けまで誌面が案内しているのは、加盟店が実際につまずく箇所だからです。JU愛知事務局では「JU古物商標識」の作製についての相談・申込みを受け付けています。
④ 仮設店舗での買取ができるようになった
ここまでは義務の話ですが、改正には営業の幅を広げる変更も含まれていました。営業制限の見直しにより、イベント会場などの仮設店舗でも古物の買取ができるようになったことです。
手続きは「仮設店舗の届出」を3日前までに所轄警察署へ提出すること。これにより、営業所以外の場所での買取が認められます。改正前は「買取は営業所か相手方の住所等で」という制約があり、催事場での買取イベントは事実上できませんでした。この見直しは、販売活動の柔軟性を高める方向の変更です。
⑤ 欠格事由の追加 ― 窃盗罪と暴力団員等
改正では許可の欠格事由に「窃盗罪」の有罪者と「暴力団員等」が追加されました。該当する場合は許可を受けられず、既存の許可も取消しの対象になります。
この改正の狙いは明確で、盗品の流通経路を断つことです。愛知県警察本部の菅本修警部補は講習会で、愛知県における車両盗難の実態 ― とりわけプリウス、ランドクルーザー、レクサスLXへの被害集中 ― を報告したうえで、この欠格事由の追加によって不適格者が許可を得にくくなることへの期待を述べています。
あわせて愛知県では、中古車の保管場所(ヤード)を規制する「ヤード条例」についても、坂下憲司警部補から説明が行われました。盗難防止と環境保護を目的とした条例で、カラー刷りで文字を大きくしたパンフレットが配布されています。
変わらない土台 ― 防犯3大義務と立入調査
改正で手続きは変わりましたが、古物商としての根本の義務は変わっていません。それが防犯3大義務です。
① 取引相手の確認(本人確認)
② 取引内容の記録・保存(帳簿等。3年間)
③ 不正品の疑いがあるときの警察への申告
講習会で愛知県警察本部の濱松敬介警部補が強調したのは、民法上「知らなかった」は通用しないという点です。扱った車が盗難車だった場合、無償で返還する義務を負います。仕入れた代金は戻らず、車も失う ― これが古物商のリスクの実像です。だから本人確認と記録は「面倒な手続き」ではなく、自分の店を守る仕組みだという説明になります。
警察の立入調査で確認されるのは、看板(標識)の掲出、許可内容に変更がないか、そして3大義務の遵守など5項目。これらを満たしていれば調査は速やかに終わります。当時、警察は立入調査の回数を増やす方針を示していました。
講習会は「JU適正販売店」の必須要件でもある
これらの法改正の内容は、JU愛知が毎年開催する古物管理者講習会で、愛知県警察本部の講師から直接説明されてきました。この講習会は単なる勉強会ではなく、「JU適正販売店」の認定申請および認定継続の必須要件です。複数の営業拠点を持つ会社は、各拠点の管理者が全員出席しなければ要件を満たしません。実際に令和元年度には3社が未受講で認定資格を失っています(受講すれば再認定は可能)。
講習会は年によって内容を組み替えており、平成29年度は106社・114名が参加して、第1部・古物管理者講習会、第2部・小売戦略セミナー、第3部・リース勉強会という3部構成で開かれました。受講費用は1,000円で全額補助(実質無料)とされた年もあります。
買う側にとって、この法律は何を守っているか
古物営業法は、消費者から見ると縁遠い法律に見えます。しかし実際には、「その車は誰から、どういう経緯で仕入れたものか」を店に記録させ、盗品が市場に混ざらないようにする法律です。
買った車が実は盗難車だった場合、被害はそのまま買主に及びます。本人確認を徹底し、帳簿を3年間保存し、不審な取引を警察に申告する ― こうした義務を守っている店で買うことは、「その車の出どころが追える」ということでもあります。JU愛知の加盟店が毎年講習会に出席し、適正販売店の要件にまでしているのは、そこが商売の土台だからです。