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制度・法令

「JU適正販売店」とは何か
― 9つの認定基準と、17社から80社へ広がった9年の記録

この記事のポイント(要約)

中古車を買うとき、店の良し悪しを外から見分けるのは難しいものです。「JU適正販売店」は、その難しさに業界の側から答えを出そうとした制度で、会社単位で誓約し、その会社のすべての営業所が9項目の基準を満たしたときだけ認定されます。基準は「研修を受けた人が各店にいること」「法定点検は認証工場で行うこと」「契約書が監修を受けていること」など、いずれも売り方そのものに関わる要件です。愛知県内の認定は平成29年6月の17社から始まり、平成31年1月に32社・34店舗、令和元年12月に42社・48店舗、令和3年8月に65社・75店舗、令和4年3月に67社、令和5年7月に74社、そして令和8年4月には80社・94店舗へ。9年で約4.7倍に増えました。本記事は、その基準の中身と、増えるまでに何があったのかを機関誌「あいぶら」の記録からまとめたものです。

認定は「店」ではなく「会社」に与えられる

まず押さえておきたいのは、JU適正販売店の認定が会社単位だということです。誓約するのは会社で、しかもその会社のすべての営業所が基準を満たしていなければ認定されません。「本店だけ研修を受けている」「支店の古物管理者が講習に出ていない」という状態では、会社として認定を受けられない仕組みです。

この設計は運用にもそのまま効いています。機関誌には、複数拠点を持つ会社は各拠点の管理者が全員出席しなければ要件を満たさないこと、そして令和元年度には3社が古物管理者講習会の未受講で認定資格を失ったことが記されています(受講すれば再認定は可能)。一度取れば終わりの看板ではなく、毎年の受講と維持が前提の制度だということです。

認定基準9項目 ― 誌面に掲載された要件

機関誌が繰り返し掲載してきた認定要件は次の9項目です。

#要件意味するところ
所属・所在地協会が認定申請を承認していること地元の協会が「この会社なら」と認めていること
自動車公正取引協議会の会員であり、申請日から過去5年以内に自動車公正競争規約違反で警告以上の措置、または消費者庁等からそれに準ずる措置を受けていないこと(要綱第5条2項の定めにも該当しないこと)表示や広告のルール違反歴がないこと
すべての営業所の古物管理者が古物管理者講習会を受講していること盗難車・盗品を扱わないための防犯知識
すべての営業所が中古自動車販売士在籍店であること資格を持つ販売担当がいること
すべての営業所に、中販連が実施するCS基礎研修の修了者が1名以上在籍していること接客・顧客対応の基礎を学んだ人がいること
すべての営業所に、中販連の車両見極め初級研修の修了者、運営委員会が同等と認める研修の修了者、または現に有効な中古自動車査定士資格を有する者が1名以上在籍していること修復歴を見抜ける人がいること
すべての営業所が法定点検分解整備を行う場合、認証または指定工場で行っていること(自認)整備を無資格・無認証で済ませないこと
使用している自動車売買注文書(買取契約書を含む)および契約上の特約事項(裏面約款等)が、監修団体の監修を受けているか、JU自動車売買注文書特約事項に準拠していること契約書そのものが第三者の目を通っていること
自動車公正競争規約を遵守すること、および消費者トラブルが起きた際には認定申請を承認した協会の指導を受けることを誓約することトラブル時に第三者の指導を受け入れること

買う側の目線で並べ替えると、この9項目は「誰が売るか(④⑤⑥)」「どう整備するか(⑦)」「何を交わすか(⑧)」「揉めたときどうするか(②⑨)」を、いずれも外形的に確認できる形にしたものだと分かります。とくに⑨は重要で、消費者トラブルが起きたときに協会の指導を受けると、店の側があらかじめ約束しているという点が、一般の販売店との実務上の違いになります。

17社から80社へ ― 誌面が記録した認定数の推移

制度の広がりは、機関誌に掲載された「JU適正販売店一覧」の社数から追うことができます。

時点認定数掲載号
平成29年6月5日17社第238号
平成30年3月ごろ26社第290号の回顧記事
平成31年1月24日32社・34店舗第257・258号
令和元年12月5日42社・48店舗第268号
令和3年2月60社超第290号
令和3年8月65社・75店舗第289号
令和4年3月15日67社第296号
令和5年7月15日74社第311・312号
令和8年4月15日80社・94店舗第343・344号

グラフにすれば右肩上がりの一本線ですが、実際には平成30年前後で一度止まりかけたことが誌面に残っています。第290号の回顧記事は、当時の認定数26社を「全国的にも後進」と率直に書いています。

止まりかけた制度を動かしたもの ― 「昌さん」と、メリット論への回答

転機は平成30年3月の山本昌氏の特別講演会でした。JU愛知はこれを機に独自の増強施策を始め、講演会と情報交換会には70社・110名が参加。「協会員数の1割にあたる60社」を当面の目標に掲げ、情報交換会の最後に高垣委員長が「環境変化に適応した会社だけが生き残る」と宣言しました。

それでも増加が遅れた最大の理由として誌面が挙げているのが、「メリットが見えない」という現場の声です。顧客接点強化の施策やJUテントリでのアピール、仕入れ面での優遇など個別のメリットはあったものの、「必ず儲かる」と言い切れる決定打がない、というのが率直なところでした。

これに対して小売振興委員会は、令和元年から「ぶつけ合おう本音 さらけ出そう心根」をテーマにしたサバイバルセミナーを定期開催し、生の声を集めて愛知独自の支援施策を作る方向に舵を切ります。その具体的な成果のひとつが、翌年に始まる「JU愛知保証」でした。オークション落札車の保証料を組合が負担する仕組みで、令和2年度の講習会では参加者全員がその場で加盟申請を終えています。制度を広げたのは呼びかけではなく、加盟した店が実際に使える仕掛けを作ったことだった、というのが記録から読み取れる経緯です。

研修を無料にして裾野を広げた

もうひとつ効いたのが、認定要件そのもののハードルを下げる支援です。令和元年度、JU愛知はCS基礎研修・車両見極め初級研修・実車研修の受講費用を全額補助(実質0円)とし、年度内2回ずつ開催しました。中古自動車販売士の研修・試験も、平成30年度の5,000円補助から令和元年度は15,000円の全額補助へ拡充しています。

認定に必要な研修修了者を、費用の壁で諦めさせない ― この判断が、平成31年1月の32社から令和元年12月の42社への増加と時期的に重なっています。

「販売士」と「適正販売店」は二階建て

制度の全体像は二階建てで理解すると分かりやすくなります。1階が「中古自動車販売士」(人の資格)、2階が「JU適正販売店」(店の認定)です。

中古自動車販売士は、車両品質評価研修(修復歴の判断基準や発見の糸口)とコンプライアンス研修(JUの歴史、業界健全化の取り組み、法令・ルール)の二本柱を1日で受け、直後に試験を受けて認定されます。試験はマークシート式で、研修マニュアルを参照しながら解答できます。

誌面が繰り返し紹介しているのが「付箋作戦」という受講のコツです。研修中に講師の指示で重要箇所に付箋を貼り、赤線とメモを入れておく。試験でその付箋が効くのはもちろんですが、本当の狙いはその先にあります。お客様から修復歴について質問されたとき、付箋の付いたマニュアルをその場で開いて、判断基準を一緒に確認しながら説明できる。「この付箋は研修のときに貼ったものです」と言えることが、そのまま説明の裏付けになる、という考え方です。資格を取ることがゴールではなく、店頭での説明力に変えるところまでが制度の設計に入っています。

買う側にとって、この認定は何を意味するか

JU適正販売店の認定は、「この店なら絶対に失敗しない」という保証ではありません。ただ、研修を受けた人が店にいること、整備を認証工場で行っていること、契約書が監修を通っていること、トラブル時に協会の指導を受けると約束していることが、会社単位で確認されていることは確かです。しかも、要件は毎年の講習受講で維持しなければならず、外れれば認定は失われます。

中古車は一台ごとに状態が違う商品です。だからこそ、車そのものではなく「売り方の作法」を外から確認できる目印には意味があります。愛知県内の80社・94店舗は、その作法を続けることを選んだ店ということになります。

ℹ️ 補足本記事の認定社数・要件は、いずれも機関誌「あいぶら」各号(第238号〜第343・344号)に掲載された当時の情報です。認定要件の条番号や表現は号によって多少異なり(①の「協会の承認」を項目として数えるかどうかで9項目の並びが前後します)、本記事では最新号の並びに合わせて掲載しています。最新の認定状況・要件はJU愛知事務局へご確認ください。

出典:JU愛知(愛知県中古自動車販売商工組合) 機関誌「あいぶら」第238号〜第343・344号