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研修レポート

令和7年度「車両見極め初級研修」を開催
― 新車製造と損傷修復の「違い」を学ぶ。比較できなくても「色や硬さ」から痕跡を探して

この記事のポイント(要約)

中古自動車販売士在籍店を対象としたJU愛知・小売振興委員会主幹の令和7年度「車両見極め初級研修」が2026年2月10日、TKPガーデンシティPREMIUM名駅西口で開かれた。13年連続・通算16度目の開催で、メンバーショップ12社から経営者やスタッフら総勢15名が受講。午前10時から昼食・休憩を挟んで延べ5時間余、講師の松田敬氏(株式会社AIS 関連サービス推進部シニアスペシャリスト)から修復歴車の判断基準やパネル交換歴の見極めポイントを学び、最後は理解度を試すペーパーテストにも挑んだ。この研修の修了は「JU適正販売店」認定の要件のひとつで、中古自動車販売士以外のスタッフでも受講できる。講義は①車両検査の目的と種類②修復歴車の定義と種類③交換歴の見極め方④車体構造の発展と近年の骨格構造のチェックポイント ― の順で展開。修復歴判定のキーワードは「骨格・修正・交換・現状車」の4つで、10台査定すれば少なくとも3台は修復歴車である確率が高いという。JU愛知事務局・検査部検査課の若手職員4名もオブザーバーとして出席した。

TKPガーデンシティPREMIUM名駅西口に12社15名 ― 13年連続・通算16度目

中古自動車販売士在籍店の皆様を対象とした、小売振興委員会主幹による令和7年度「車両見極め初級研修」が2月10日、TKPガーデンシティPREMIUM名駅西口(貸会議室)で開かれました。

13年連続・通算16度目の開催となった今回の研修には、メンバーショップ12社から経営者やスタッフの皆様など総勢15名が参加。午前10時から昼食・休憩を挟んで延べ5時間余にわたって、講師の松田敬氏(株式会社AIS 関連サービス推進部シニアスペシャリスト)から修復歴車の判断基準やパネル交換歴見極めのポイントなどについてレクチャーを受けるとともに、最後は研修内容の理解度を試すペーパーテストにも挑みました。

なお、この日の研修には、JU愛知事務局・検査部検査課の若手職員4名もオブザーバーとして出席し、正規受講者の皆様と一緒に講師の話に熱心に耳を傾けた次第です。

「JU適正販売店」認定の要件のひとつ ― 販売士以外のスタッフでも受講できる

JU中販連が平成27年度から本格的に取り組んでいる「JU適正販売店制度」では、中古自動車販売士はもとより、CS向上基礎研修受講修了者(販売士が対象)、車両見極め初級研修受講修了者(販売士在籍店であれば販売士以外のスタッフでもOK)がすべて揃った上に、他の認定要件も漏れなくクリアしているメンバーショップを「JU適正販売店」として正式に認定し、当該店が真の「安心と信頼」を提供できる自動車販売店であることを消費者ユーザーに広くアピールしています。

私たちJU愛知は平成29年度からJU適正販売店の増強に本腰を入れ始めました。翌30年度からは、その認定申請を側面支援する目的から、3年間にわたって「CS基礎研修」(「おもてなし理論研修」を同時開催)と「車両見極め初級研修」を2回ずつ開催しましたが、受講資格対象者が一定数に落ち着いてきたこともあり、令和3年度から従来の年1回開催に戻しています。

3代目・松田講師は「路線変更」 ― 経験談より「論理的・多角的」な講義に

今回の講師の松田氏は、私たちJU愛知にとっては3代目の専任講師で、前任の2講師とは教習内容が若干異なっていました。

具体的には、これまでの2講師は長年にわたってオークション検査員を務めた、いわゆる叩き上げのAIS認定講師で、自らの実体験に基づいて、修復歴や交換歴の見極め方などを分かりやすく紹介してくれました。

それに対し、松田講師の場合は、そうしたAA検査員の目線に立ったレクチャーは少なく、テーマに応じて、お客様目線や自動車メーカー目線等に立った解説を織り交ぜることで、修復跡や交換跡の見極め方を多角的かつ論理的にレクチャーしてくれたのです。

どちらが良いかは、受講者の皆様のキャリア等にもよりますが、時間的な制約がなく、双方のレクチャーを合体させることができれば、受講者の皆様にとっては、より有益で役に立つ研修になるに違いありません。

事前に先輩や同僚の皆様から話を聞いて今回の研修に参加された受講者の中には、前任の講師が次々に受講者に質問を投げ掛けるスタイルだったのに対し、この日は一切の質問がなかったことも含め、「聞いていた内容と違った」と思われた皆様もいらっしゃったことでしょう。もし、この日の研修から戻られたスタッフの方が、過去に受講修了された先輩たちとは若干ニュアンスが異なる報告をされた場合は、間違いではなく、きちんと受講されていた証拠ですので、ご安心ください。

ASVの普及と暮らしの変化 ― 時流に沿った内外装チェックを

この日の研修は従来と同様、①車両検査の目的と種類②修復歴車の定義と種類③交換歴の見極め方④車体構造の発展と近年の骨格構造のチェックポイント ― の順で展開されました。その中で、松田講師が特に強調したポイント(要旨)は次の通りです。

外装 ― ガラス・ドアミラー・ホイールの3点

外装のチェックで近年重要度が増しているのが、ガラス、ドアミラー、ホイールの3点。先進安全自動車(ASV)の普及により、ぶつからないクルマが以前よりも増えている。そうしたクルマのフロントガラスやドアミラーには、センサー部品のカメラ、レーダー等が付いているため、損傷を受けた場合には、以前の倍以上の修理費が掛かる。以前であれば社外部品で対応できたものが、純正品でなければ対応できないため、下取り査定の際にこれを見落とすと大変な目に遭う。ガラスは隈なく丁寧にチェックし、閉じた状態のドアミラーは必ず開けてから確認すべきだ。

扁平タイヤやインチアップの普及により、ホイール価格も大幅に上がっている。ホイールの歪み等にはくれぐれも注意して欲しい。

内装 ― シートのコゲ穴、ヘッドレストの欠品、ペットの毛

内装のチェックでは、シートのコゲ穴、ヘッドレストの欠品、ペットの毛に要注意。喫煙者数は減っているが、喫煙の痕跡となるコゲ穴を嫌うユーザーは増えている。ヘッドレストの欠品とペットの毛は、コロナ禍をきっかけに、車中泊をする人やペットを飼う人が増えたことが背景にある。ヘッドレストは車中泊の就寝時などに外す機会が増えたため、以前よりも欠品率が高まっているので、特に注意を。

最も出合う確率が高い「修復歴車」 ― 骨格・修正・交換・現状車で判断を

クルマの商品価値が最も下落するのが重大瑕疵(かし)で、それを漏れなく発見するには特殊な見方が必要。ただ、限られた時間の中ですべてをチェックするのは難しい。冠水車、消火剤散布車、盗難車など、それぞれの痕跡の特徴を頭にしっかりと叩き込んで対応すべきだ。

近年は豪雨や洪水等により冠水車が増えており、消費生活センターへの苦情・相談件数も急増している。冠水車も修復歴車と同様、ユーザー保護の観点から、近く法律できちんと定められる公算が大きいと(松田講師は)見ている。

盗難車は、車検証やコーションプレートが偽装されている場合がある。違和感を覚えた際には、面倒でも、車台番号をきちんとチェックして欲しい。

重大瑕疵の中で最も出合う確率が高いのは修復歴車。10台査定すれば、少なくとも3台は修復歴車である確率が高い。

修復歴判定のキーワードは「骨格・修正・交換・現状車」の4つ。ダメージは外部、外板を介して骨格に至る。骨格だけが歪んでいるものは、整備作業ミスの工具等による凹み、シートベルトの金具を挟んだことによる凹み、タイヤ交換時のジャッキアップのミス等による凹み ― と考えられるため修復歴にならない。こうした基本的な判定基準を理解しておけば、そんなに難しく考えなくてもいいのではないか。

「外板パネル交換」を見逃すな ― 発見の糸口は「ひとつじゃない」

ダメージは外から内へ波及し、その修復は内から外への手順となる。修復歴車を見極める入口は外板パネル。外板パネル交換を見落とすと、修復歴すべてを見落とすことになる。

新車は、鋼板を切って、折り曲げて、くっ付けることで車体が組み立てられる。車体への塗装は、錆止めのために下塗りを行い、防水のためにシーラントが塗布され、乾燥・焼付の末に、美観と仕上がり重視の中塗り・上塗り(重ね塗り)が施される。

下塗りの塗色が灰色になるのは、カーボン以外に特殊な塗料が加えられるため。供給部品のほとんどの塗色が黒いのは、新車の組付部品よりも安く提供する狙いで、カーボンだけの塗料が使われているため。

新車製造時のシーラントが硬くなるのは、超高温で短時間の焼付を行うから。街中の鈑金塗装工場等に配されている塗装ブースでは、新車と同じような硬さにはならない。

重ね塗りの際には、ネジ止めのボンネットやドアを取り付けてスプレー塗装を施すため、その時点では当該ネジはボディーと同じ色になる。だが内装部品を取り付ける段階で当該ネジを取り外し、内装部品を組み付けた後に新しいネジでボンネットやドアを取り付けるため、ネジ色はボディーと違う色になる。

そういった製造工程の流れをきちんと理解し、基本的な知識を頭に叩き込んでおけば、新車との違いを探す時や、修復跡や交換跡を見極める時に大いに役立つはずだ。

そうは言っても、硬化剤を入れたシーラントは軟らかくならないため、新車との違いを見極められない場合もある。また、リボンシーラントのように見た目や硬さだけでは修復跡と判断できない場合もある。そうしたケースでは、角の部分をチェックして欲しい。新車のようにシーラントを90度に折り曲げることはほとんど不可能だから。

それでも判断できない場合は、シーラントだけに固執せず、ネジ止めの外板パネルであればネジ頭の回し跡や下地色、溶接止めの外板パネルであれば溶接跡や下地色をそれぞれチェックするなどして、新車との違いを見つけるべきだ。ただ、最近は黒色ではない灰色の供給部品も出回っているので、そこでも注意を払う必要がある。

受講者に寄り添うエール ― AA検査員でなくても、できます!

松田講師が前任の2講師と明らかに違っていたのは、メーカーによる新車製造工程と、鈑金塗装工場による修復作業工程について、それぞれ時間を掛けて分かりやすく説明し、組付部品と供給部品、新車塗装と補修塗装、新車溶接と補修溶接、それぞれの違いを受講者の皆様の頭に叩き込むようにレクチャーしてくれたことです。

そのクルマを見ただけでは新車との違いが分からなくても、新車製造と損傷修復(再塗装・再溶接等)の違いを理解していれば、修復跡や交換跡を発見できる確率は高まるはず。松田講師のレクチャーには、受講者の皆様に寄り添い、奮起を促すエールが込められていたようです。

出典:JU愛知(愛知県中古自動車販売商工組合) 機関誌「あいぶら」第343号・344号(2026年2月・3月)