商品中古軽自動車の軽自動車税、名古屋市が課税免除へ
― JU愛知が動かした「棚卸資産への課税」問題。200社・1,757台の実態調査から市議会答弁まで
この記事のポイント(要約)
何が問題だったのか ― 商品在庫に毎年かかる税金
中古自動車販売事業者は、下取りや買取りで仕入れた軽自動車を、販売までの間ナンバープレートを返納せずに事業者名義の在庫として管理します。ナンバーを外してしまうと、商談後に改めて検査・登録が必要になり、すぐに納車できないためです。
しかし軽自動車税(種別割)は毎年4月1日時点の所有者に課税されます。つまり、店頭に展示されているだけで公道を走っていない「商品」にも、1台ずつ税金がかかる。JU愛知はこれを「棚卸資産に対する課税」と断じ、是正を求めました。根拠のひとつが、平成12年11月1日発行の『市町村諸税逐条解説』に「使用されていない軽自動車は条例で課税対象から除外することが適当」と明記されている点です。課税するかどうかは、市町村の条例で変えられる余地があったのです。
なお、登録車(普通車・小型車)の商品中古自動車については、自動車税(種別割)の月割減免制度が既にあり、JU愛知は毎年その申請手続きを組合員に案内しています(関連記事参照)。軽自動車には同様の手当てがない ― この非対称も、運動の背景にありました。
先例はあった ― 一宮市の全額免除と、その廃止
実は愛知県内に先例がありました。一宮市では平成19年度から令和2年度まで、商品中古軽自動車の全額免除制度が実施されていたのです。協会が事務局を務め、対象車両の実地調査と申請代行まで担う運用でした。
しかしこの制度は、「使用しない自動車」の解釈をめぐる大津地裁の判示や国政での答弁が問題視され、市の財政状況も理由に廃止されてしまいます。今回の運動は、この解釈問題を乗り越えれば名古屋市、さらには愛知県全域へ免除を広げられるという判断から始まりました。
武器はデータ ― 200社・1,757台の実態調査
要望を「お願い」で終わらせないために、JU愛知は数字を揃えました。令和4年5月18日から6月18日まで、名古屋市内に営業拠点を構える協会員200社を対象に実態調査を実施。令和4年度の軽自動車税納税通知書に基づいて、商品中古軽自動車1,757台の納税状況を把握しました。調査回答率は91.3%、市内16区を網羅 ― 業界団体だからこそ集められた、課税実態の一次データです。
この調査結果は要望書の根拠として活用されました。「どの区の、何社が、何台分を負担しているか」を示せたことが、後の展開を大きく後押しします。
要望書の提出から市議会答弁まで
運動の経過を時系列で並べます(いずれも令和4年)。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 4月25日 | 政経懇談会で課税の理不尽さを訴え、課税免除を陳情 |
| 4月27日 | 名古屋市会議員と初のコンタクト。要望実現に向けた協力体制を確立 |
| 5月18日〜6月18日 | 市内200社の実態調査を実施(1,757台・回答率91.3%) |
| 7月5日 | 名古屋市当局へ要望書を提出。市役所本庁舎でのセレモニーに杉野副市長・財務局長・税務監らが出席し、JU愛知から兼松会長・内藤筆頭副会長・尾崎専務理事らが参加 |
| 9月15日 | 市議会定例会で経過質問に対し、杉野副市長が「令和5年度からの運用開始(課税免除)に向けて準備を進めていく」と明言 |
7月5日のセレモニーの質疑応答では、「使用しない自動車」の解釈について市の税務監に明確な回答を求める場面もありました。誌面は、同席していた税制課の職員らが「要望を断る際には解釈を明確に示さなければならない」と受け止めた様子を伝えています。そして9月15日の市議会で、他都市でも使用されていない商品中古車への課税免除が行われている状況を踏まえ、副市長が令和5年度からの免除準備を明言。要望からわずか2か月あまりで、行政の公式答弁を引き出しました。
この運動が示したもの ― 加盟店の負担を、組合が制度から軽くする
1台あたりの軽自動車税は決して大きな金額ではありません。しかし在庫を多く抱える店ほど毎年確実に積み上がる負担であり、個々の販売店が単独で市に訴えても動く話ではありませんでした。200社の調査協力でデータを揃え、組合として要望し、議会で答弁を引き出す ― 業界団体の政策活動が実を結んだ、教科書のような事例です。
JU愛知はオークション運営や研修だけでなく、こうした制度面から加盟店の経営を支える活動を続けています。加盟店にとっては経営負担の軽減が、消費者にとっては健全な経営基盤を持つ販売店が地域に残ることが、この運動の果実です。