球界のレジェンド・山本昌氏がJU愛知で特別講演「継続する心」
― 現役32年を支えた3本柱と、緊張を味方にする準備の力
この記事のポイント(要約)



恩師・星野仙一氏との思い出 ―「闘将」の本当の姿
講演の年の1月に星野仙一氏が亡くなったことを受け、山本氏はまず恩師の思い出から話を始めました。「闘将」「鉄拳制裁」というマスコミのレッテルについて、実際は「あんなもんじゃない」と笑いながら振り返り、自身も星野監督から多くを学び、何度も鉄拳を浴びたと明かします。現役当時、星野氏の本当の姿を語れなかったのは「殿堂入りを阻む恐れがあったから。今なら正直に語れます」――冒頭から会場を和ませる導入でした。
現役32年を支えた3本柱 ― 準備・出会い・転機
山本氏が現役32年間を支えたものとして挙げたのは、次の3つです。
| 柱 | 中身 |
|---|---|
| ① あらゆることへの準備 | 本番で力を出すための下ごしらえを惜しまない |
| ② 人との出会い | 恩師・星野仙一氏、アイク生原氏との出会いが今の自分を形作った |
| ③ 転機を手に取る意識 | 訪れた転機を見逃さず、自分からつかみにいく |
プライベートのラジコン趣味からも「頭を使うことの大切さ」を学んだと明かし、講演テーマ「継続する心」の実践として、緊張感を味方にする・小さな運を逃さない・モチベーションを維持するという3点を常に心がけてきたと語りました。
緊張は「準備」でしか抑えられない
意外なことに、山本氏はマウンドに上がる際「常に膝がガクガク震えていた」と明かしました。恥をかきたくない、成功したいという思いが緊張を生む。だからこそ行き着いた結論が「緊張感を抑えるには事前の準備以外に術はない」でした。長年、緊張する場面に起用されることにやり甲斐を感じ、準備を重ねて臨むようになったと語り、最後は「本番直前にトイレに行くといいですよ」と笑いを誘いました。大事な商談の前に何を仕込んでおくか――販売店の現場にそのまま通じる話です。
小さな運は、普段の行いが生む
勝利には数々の小さな運が付き纏った、と山本氏は言います。その運を引き寄せる秘訣は「普段の行い」。グラウンドにツバを吐かない。マウンドから下りる際にホームベースを踏まない。登板前日にはグラブとスパイクをピカピカに磨く。細部まで丁寧な姿勢の積み重ねが運を呼ぶ、という信条です。店舗や展示車両を磨き込む日常と重ねて聞いた組合員も多かったはずです。
「世界で一番幸せな野球選手」― モチベーションの源
モチベーションの原動力は、野球が好きだったこと、そしてチームのために力を尽くしたいという思いでした。入団当初は一軍昇格だけを夢見ていたのが、やがて「1軍で勝つことの価値」を意識するようになり、40代に入ると増していく周囲の声援に応えるため、趣味のラジコンを封印したと笑いながら振り返ります。引退会見で「世界で一番幸せな野球選手」と語った理由は、「結果に悔いはあるが、過程には後悔がないから」。現在のモチベーションを問われると「もう一度ユニフォームを着て優勝したい」と明かし、会場を笑顔で締めくくりました。
一番想い出に残る一球は? ― 直球勝負の2球
質疑応答で「一番想い出に残る一球は?」と問われた山本氏は、2球を即答しました。1998年、広島の前田智徳選手にホームランを打たれたストレート。そして2008年、巨人のイ・スンヨプ選手を三振に打ち取ったストレート。前者は打たれた球、後者は後に本人から「絶対に打てない一球だった」と言われた球です。打たれた球と打ち取った球を並べて「想い出の一球」と言えるところに、32年間の重みが表れていました。