山下常務が語る「人件費は成長の源泉」
― JU愛知オリジナル研修(第1弾)。顧客接点強化の土台は社員満足度、SDV・EV時代への備えを説く
この記事のポイント(要約)
- 令和7年度JU愛知オリジナル研修(第1弾)を4月15日、TKPガーデンシティPREMIUM名駅西口で開催。25社30名が参加
- 講師はJU中商連・山下晋常務理事。全店対象研修は3年連続
- 給与アップはコストではなく付加価値。人件費を成長発展の源泉と捉えるべきと提言
- 顧客接点強化の基盤は社員満足度。「嫌われて帰ろうと思っています」と切り出した
- SDVの普及が中古車販売に打撃を与える可能性を指摘。バッテリー技術のブレイクスルーが引き金に
- EV販売を生き残りの切り札として今から準備すべき。「令和の時代に昭和の経営では生き残れない」
3年連続の全店対象研修 ― 25社30名が名駅西口に集まった
令和7年度のJU愛知オリジナル研修(第1弾)が、4月15日、TKPガーデンシティPREMIUM名駅西口で開催されました。対象は全組合員店。25社から30名の経営者・幹部社員が参加し、学習研究所マナビスタ代表の中島尚美氏もオブザーバーとして受講しています。
特別講師はJU中商連の山下晋常務理事。テーマは「社会の変化と私たちのテーマ」です。山下常務による全店対象研修は、一昨年6月、昨年4月に続いて3年連続となりました。単発の講演ではなく、同じ講師が3年かけて同じ問いを投げ続けている――この連続性そのものが、今回の研修の背骨になっています。
「嫌われて帰ろうと思っています」 ― 給与アップはコストではなく付加価値
山下常務は冒頭、「嫌われて帰ろうと思っています」と宣言してレクチャーを始めました。大手企業の賃上げが連日報じられるなかで、「いま、言っておかなければならない」という強い意図があったといいます。
その中身が、この研修で最も重い一言でした。人件費はコストではなく、成長発展の源泉である。給与アップを削るべき経費として見るのではなく、付加価値として捉え直すべきだ、という主張です。
論の組み立てはこうです。中古車販売店が生き残る鍵は「顧客接点強化」にある。しかし顧客接点を担うのは現場の社員であり、その質は社員満足度に規定される。社員満足度を欠いたまま接客の技術だけを磨いても、顧客との関係は深まらない。つまり給与を含む処遇は、接客の前提条件だということになります。
経営者にとっては耳の痛い話です。だからこその「嫌われて帰る」宣言でした。受講者からは「本当なら言いたくないことを、嫌われてもいいから話してくれたことに感謝」という声が相次いだと報告されています。
SDVは中古車販売に何をもたらすか ― バッテリーの壁が破れたとき
研修のもう一つの柱は、業界の外から来る変化でした。山下常務が名指しで挙げたのが、テスラが提唱するSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル=ソフトウェアで機能が定義される車)です。
SDVは、購入後もソフトウェアの更新で機能が変わっていきます。ハードウェアの状態と年式で価値を測ってきた中古車の商習慣とは、価値の決まり方が根本的に違います。山下常務は、SDVの普及が中古車販売に大打撃を与える可能性を指摘したうえで、その引き金としてバッテリー技術のブレイクスルーを挙げました。航続距離と充電時間の壁が破れれば、SDVは一気に広がる、という読みです。
そのうえでの提言が、EV販売を「生き残りの切り札」として今から準備することでした。EVはまだ台数が出ていない、だから様子を見る――という判断は、変化が来てからでは間に合わない、という趣旨です。「令和の時代に昭和の経営では生き残れない」と断言し、目指すべき姿を「お客様が幸せになるお手伝いができる販売店」と表現しています。
3年間で積み上げた線 ― モビリティサービスへの転換と、価値観の共有
今回の研修は、過去2年で提唱された「モビリティ・サービス・プラットフォーム」構築の意義を改めて確認する場でもありました。
山下常務が引いたのが、トヨタ自動車の豊田章男氏が掲げた「クルマ社会を超え、人々の移動を助ける会社」という宣言です。売る対象がクルマからモビリティへ移っても、「お客様との絆を大事にする」という軸は変わらない――両者の考えが一致する点として提示されました。
あわせて、価値観を共有する取り組みとして「ルビープログラム」が紹介されています。処遇の話(人件費)、技術の話(SDV・EV)、そして価値観の話。この3つが一本の線でつながっているところが、3年続けている研修の到達点だといえます。
販売店にとっての読みどころ
この研修の内容を、明日からの実務に引き寄せると次のようになります。
- 賃上げの議論を「払えるかどうか」だけで判断しない。 接客の質・定着率・顧客との継続的な関係まで含めた収支で見る、という視点の転換が提案されています。
- EVを「まだ売れないもの」から「準備するもの」に置き換える。 充電環境、バッテリー診断、査定の考え方など、扱いを始めてから覚えるのでは遅い領域が多くあります。
- SDVは中古車の価値の決まり方を変える。 年式・走行距離・修復歴に加えて、ソフトウェアの更新状況や機能の有効化状態が問われる時代への備えが要ります。
JU愛知では、この全店対象研修に続けて、適正販売店向けのステップ研修や実車を使った車両見極め研修など、複数の研修を年間を通して実施しています。
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