令和7年度「自動車修理講習会」を開催
― 鈑金塗装のイロハを学び、「修復の裏側」を知る。31名が下地処理とパテ跡の関係、3コートパールの奥行きを体感
この記事のポイント(要約)
開催概要 ― メンテナンス講習の4本目は「鈑金塗装」
JU愛知の検査委員会が主幹するメンテナンス講習は、これまで整備、EV・HV、ASV(先進安全自動車)と積み重ねてきました。令和7年度はその4本目として、鈑金塗装を取り上げた「自動車修理講習会」をJU愛知オークション会場で開催し、31名が受講しました。
講師は芹澤講師。テーマは「鈑金塗装のイロハ」です。中古車販売の現場では、鈑金塗装は外注に出す仕事であることが多く、実際の作業を最初から最後まで見た経験のある販売スタッフはほとんどいません。だからこそ、講習の狙いは職人を育てることではなく、「修復の裏側」を想像できるようになることに置かれました。大塚検査委員長は「修復の裏側を思い描けるようになってほしい」と受講者にエールを送っています。
見たことのない作業を「見せる」 ― 教材と動画で可視化
芹澤講師は、作業現場を観察したことがない受講者でも理解できるよう、教材マニュアル・スライド・模型・パネル・動画を組み合わせて解説しました。動画で視覚化されたのは、次のような工程です。
- パネル鈑金の流れ(へこみをどの順で起こしていくか)
- フレーム修正の流れ(車体の骨格をどう引き出すか)
- ワッシャー溶植引き出しの工程(ワッシャーを溶接して引っ張り、裏から叩けない箇所を修正する手法)
文章や写真だけでは伝わりにくい工程が、動画では「どれだけ手数がかかるか」まで含めて伝わります。修復歴車の評価は、外から見える結果だけで判断しがちですが、その結果に至るまでの作業量を知っているかどうかで、見立ての深さが変わってきます。
パテ跡・ペーパー目はなぜ出るのか ― 下地処理という「手間」
講習の中心は下地処理でした。塗膜剥離、フェザーエッジ(塗膜の断面をなだらかに削り、段差を消す処理)、パテ整形の一つひとつを動画で追い、ここに手間をかけるかどうかが、後から浮いてくる「パテ跡」や「ペーパー目」の有無に直結することを確認しました。
言い換えれば、販売店が中古車を見るときに気づくパテ跡やペーパー目は、下地処理の手間が省かれた痕跡だということです。受講者からは、日ごろ仕事を任せている外注先の作業に改めて敬意を抱いたという声も聞かれました。
「塗装は魔法」 ― ソリッド・メタリック・3コートパールの違いを体感
塗装の講義では、拡大鏡と模型パネルを使い、ソリッド・メタリック・パールの違いを実際に目で確かめました。とくに3コートパールの奥行きと光の煌めきには驚きの声が相次ぎ、「塗装は魔法」と感嘆する受講者もいたといいます。
塗色の違いは、実務では補修の難易度と費用に直結します。3コートパールのように層を重ねる塗装は、部分補修で色を合わせることが難しく、隣接パネルまでぼかす必要が出てきます。「同じ小キズでも、色によって話が変わる」という感覚は、仕入れの判断でもお客様への説明でも効いてきます。
販売現場に持ち帰るもの ― 評価の精度と、説明の言葉
この講習は車両品質評価の精度向上を目的としたものです。鈑金塗装の工程を知ることで、次の2つが変わります。
- 見立ての精度 ― パテ跡・ペーパー目・塗膜の違いが「何の結果なのか」を推測できるようになる
- 説明の言葉 ― お客様に対して、修復の内容と品質を自分の言葉で説明できるようになる
修復歴の有無は基準に沿って判定するものですが、修復の「質」は基準の外にあります。同じ「修復歴なし」の板金跡でも、下地処理が丁寧なものとそうでないものがあり、それは数年後の塗膜の状態として現れます。作業の裏側を知っているスタッフは、その差に気づけます。
あわせて読みたい記事