保証期間中に故障した
― 保証はどこまで効き、期間が切れたらどうなるのか
この記事のポイント(要約)
1. そもそも「保証付き販売」とは何か
先に土台を確認します。保証がない販売でも、販売店の責任がゼロになるわけではありません。
保証なし販売でも販売店はその自動車が通常備えているべき品質、性能を保持していることにつき購入者に責任を負いますが、「通常備えるべき品質、性能」といっても必ずしも明確でない場合もありますので、一定の範囲の事項については販売店が当然に修理などの責任を持つことにして行うのが保証付き販売です。
だから保証書に何が書かれているかが決定的に重要になります。保証なし(現状渡し)の場合の責任については 「現状渡し」で買った中古車が不具合 をご覧ください。
そして、保証書の交付は任意のサービスではありません。
自動車公正競争規約は、保証付き販売を行った販売店に、保証書を購入者へ交付することを義務づけています。これらによれば、保証付き販売の場合における販売店の責任の範囲はかなり明確です。そこで、保証付き販売によって自動車を購入しようとする消費者は、保証書の交付を是非販売店に要求すべきです。
2. 相談(1)保証期間中にエンジンが焼きついた
相談① 販売店は「ユーザーが日常点検をしていればオイル不足は発見できたはずだから、修理はするが修理代を幾分かは負担してもらいたい」と言っていますが、この言い分は正しいでしょうか。
相談② エンジンの調子がなかなか元に戻らず、修理を繰り返しているうちに6ヵ月が過ぎてしまいました。販売店は「6ヵ月経過後の修理については、ユーザーが修理費の全額を支払うべきだ」と言っていますが、この言い分は正しいでしょうか。
2-1. まず「警告灯はいつ壊れたのか」で分かれる
この事例は、前提となる事実がはっきりしていないという点から始まります。
本設例では、パイロットランプが販売の当初から故障していたのか、それともユーザーの使用の途中で故障したのか、はっきりしません。
| 警告灯が壊れた時期 | 販売店の責任 |
|---|---|
| ユーザーが使用を開始してから故障した | ユーザーの使用に伴う自然損耗である可能性も否定できず、そうだとすれば販売店はその故障について責任を負う必要はなく、それに起因して起きたエンジンの焼きつきについても責任は負わないで良い |
| 販売の当初から故障していた | ユーザーがそれに気がつくべきであったかどうかにかかわりなく、販売店が責任を負うのは当然であり、その故障に起因してエンジンの焼きつきが生じたことについても、販売店が責任を負わなくてはなりません |
2-2. 相談① 修理代の一部負担を求められた
警告灯が販売の当初から故障していたという前提で見ていきます。この場合、販売店がエンジン修理の責任を負うのは上のとおりです。しかし、話はそれだけでは終わりません。
ユーザーが日常点検をしていれば、オイルの不足を発見することも容易だったはずです。日常点検というのは、自動車の安全な運行の確保という公益的な面から自動車を運行する者に課されている義務で、それは直ちに契約当事者の責任範囲を決定する根拠となるものではありませんが、運転開始にあたってオイルの量が適当であるかどうかを確かめることなどは運転にあたっての基本的かつ初歩的事項ですから、これを怠ったユーザーには、損害の発生について過失があったことになります。
以上のことから、エンジン修理の費用の一部をユーザーが負担すべきである(過失相殺)という販売店の主張は正しいといえます。
つまり「一部負担せよ」という主張自体は正しいが、その割合は1割程度が目安ということです。半額負担・全額負担を求められたときは、この考え方を確認してください。
2-3. 「使用者の過失は保証適用外」という記載の効き方
保証書の文言についても整理されています。
一般に使用されている保証書には「使用者の過失の場合は保証適用外とする」旨が記載されていますが、使用者に少しでも過失があった場合には全面的に保証適用外とするのは公序良俗違反によって無効である疑いがあります。この規定は「そのような場合には使用者の側にも一部の責任を負担してもらいます」との趣旨を表示したものと解釈するのが相当でしょう。
したがって、このような保証書の記載があったとしても、先に述べた結論(1割程度の負担)に変わりはありません。
実務では、過失の程度に応じて負担を分け合うことになります。
2-4. 相談② 修理しているうちに保証期間が過ぎた
ここは明快です。
保証期間というのは、その期間内に生じたトラブルについて責任を負うことを明示するものです。したがって、その期間内に生じたトラブルに対する修理が期間外にわたっても、保証の効力はそれに及びます。ですから設問②の場合、ユーザーは依然として販売店の負担で修理を要求できます。
「6ヵ月経過後の修理については全額を支払うべきだ」という販売店の言い分は、この整理には沿いません。基準になるのは「故障が発生した日」であって「修理が終わった日」ではないからです。
3. 相談(2)車両交換・口頭の保証・期間の延長
もう1件、保証付き販売をめぐる相談です。
相談② すべての不具合を保証するという約束(口頭)で購入したのに約束を守ってくれません。
相談③ 購入して2ヵ月半頃からエンジンの掛りが悪くなりました。販売店は、修理には応じてくれますが保証期間があと半月しかありません。保証期間を延長してもらうことはできないのですか。
3-1. 車両交換は求められるか
エンジンが止まることについては、通常保証の内容に含まれていると思われます。保証の対象項目であり保証期間内であれば、販売された自動車としての適切な品質となるように修理(無償)すれば良いことです。修理により正常な状態に戻れば車両を交換する必要はありません。
なお、これは保証の話です。契約内容そのものに適合しない車だった場合の契約不適合責任では、代金減額請求や契約の解除といった別の権利が問題になります(納車された中古車が話と違う・故障している)。
3-2. 口頭の「全部保証する」も保証か
「口頭」による約束であっても、保証付き販売に変わりはありません。したがってユーザーの要求に対し、保証の内容に従って処理されるべきです。
そのうえで、書面がないことのリスクは販売店側にも及びます。
なお、口頭保証の場合は「全ての不具合を保証する」ととられても仕方ありませんので、後日のトラブルの元にならぬよう、保証内容を明示した保証書を作成・交付すべきです。自動車公正競争規約では、保証付き販売は購入者へ保証書を交付することを義務付けていますので、保証書を交付しないことは規約違反となります。
3-3. 保証期間の延長は請求できるか
ここは2つの話を分けて読む必要があります。
| 問い | 整理 |
|---|---|
| 期間中に発生した不具合の修理は、残り期間が短くても受けられるか | 受けられます。保証期間中に発生した保証対象の不具合については、保証の残期間とは関係なく保証内容の範囲内において販売店が修理する責任があります。修理完了時が保証期間を経過しているか、していないかについては問題ではありません |
| 保証期間そのものを延ばしてもらえるか | 予め定められた保証期間の延長を当然に請求できることはありません。そのため、販売店は保証期間の延長に応じる必要はありません |
「保証の期間そのものを後ろへ延ばしてもらう」=当然には請求できない。
この2つは別の話です。困っている内容がどちらなのかを整理してから相談すると、話が早く進みます。
4. 修理のために車を持ち込む費用は誰が負担するのか
見落とされやすいのが、修理そのものの費用ではなく、車を店まで運ぶ費用です。ここは保証か契約不適合かで扱いが変わります。
| 根拠 | 持込(引取)費用の負担 |
|---|---|
| 保証による修理 | 中古車売買の契約における車両の引渡しは取立債務であり、ユーザーが店頭へ引取りに行くことが前提となる取引ですので、特別な約束をしていない限り、保証修理であっても車両を販売店に持ち込むのはユーザーの責任で行うことが原則 |
| 契約不適合による無償修理(追完請求) | この無償修理に伴う持込(引取)費用について特段の定めがない場合、ユーザーは請求することができ、販売店が負担しなければならないケースも考えられます |
遠方の販売店から購入するユーザーは、契約不適合による不具合であった場合は持込(引取)費用の負担は販売店側の責任で行う等、特別な約束をしておかないと、自費で持込(引取)費用を負担することになる場合があります。
ネットで探して県外の店から買うことが当たり前になった今、契約前に取り決めておくべき筆頭がこの項目です。
5. 保証と自然損耗 ― 保証があっても直らないもの
最後に、保証の限界です。
販売店は自動車の品質、性能を保証するといっても、販売後の使用によって自然に生じる損耗ないし性能の低下まで責任を持つというのではないことは当然です。一般に使用されている保証書にもそのことは明記されていますが、仮に保証書の交付がなかったり、そのことが明記されていない保証書が使用された場合でも、この点に変わりはないと思います。
つまり、保証書に書いていなくても、自然損耗は保証の対象外という整理です。中古車を買うということは、その前提を共有することでもあります(現状渡しの記事でも同じ考え方が出てきます)。
6. まとめ ― 保証で困ったときの確認順序
- 保証書を手元に用意する。対象部位・期間・距離・免責・修理を受けられる場所を確認する。そもそも保証書の交付は自動車公正競争規約上の義務
- いつ故障が発生したかを特定する。保証期間の基準は発生日。期間内に起きた故障なら、修理が期間外にわたっても保証は及ぶ
- その不具合はいつからあったのかを確認する。販売当初からあったなら販売店の責任、使用開始後の自然損耗なら対象外になり得る
- 一部負担を求められたら割合を確認する。買う側に過失があれば過失相殺はあり得るが、プロの過失の方が重大な場面では1割程度が目安
- 「少しでも過失があれば保証適用外」という記載を鵜呑みにしない。その場合には一部の責任を負担してもらう趣旨と解釈するのが相当
- 口頭の約束でも保証は保証。ただし後で揉めないよう、書面で受け取る
- 期間の延長は当然には請求できない。ただし期間内に発生した故障の修理は残期間と関係なく受けられる
- 遠方の店から買うなら、持込(引取)費用の負担を契約前に決めておく
保証をめぐるトラブルの多くは、保証書を受け取っていない・内容を確認していないことから始まっています。買う段階で保証書をきちんと交付し、内容を説明してくれる販売店を選ぶことが最良の予防策です。愛知県内であれば JU愛知の適正販売店 が目安になります。