「現状渡し(保証なし・整備なし)」で買った中古車が不具合
― 無償修理を求められるのはどこまでか
この記事のポイント(要約)
1. 相談 ― 「現状販売だから有償です」と言われた
「現状渡し」「現状販売」という言葉は、買う側にとって何を意味するのかが分かりにくい言葉です。売る側が「一切責任を負いません」の意味で使い、買う側が「安いぶん多少のことは我慢する」の意味で受け取っていると、納車直後にこの相談が起きます。
2. 結論 ― 分かれ目は「説明していたかどうか」
回答は、次のように整理されています。
しかし、売買契約時点ですでに発生していたオイル漏れを販売店が見落としていた場合、またはオイル漏れの事実を説明しなかった場合には、無償で修理に応じなくてはなりません。
ここで効いているのは「現状渡しかどうか」ではなく「表示・説明があったかどうか」です。同じオイル漏れでも、次のように結論が変わります。
| 状況 | 修理費の負担 |
|---|---|
| 不具合をコンディションノート等に表示し、説明していた。買う側が納得して購入 | 有償修理でよい |
| 契約時点ですでに発生していた不具合を販売店が見落としていた | 無償で修理に応じなくてはならない |
| 不具合の事実を説明しなかった | 無償で修理に応じなくてはならない |
買う側から見れば、確認すべきは「その不具合は、契約のときに聞いていたか」の一点です。聞いていなかったのであれば、現状渡しという言葉だけで諦める必要はありません。
3. なぜ中古車には品質の表示が義務づけられているのか
この結論の背景には、中古車という商品の性質があります。
中古自動車はそれまでの使用・管理状態によって、その性能は千差万別です。そこで、ユーザーがその性能を判断する資料として自動車公正競争規約によって車歴、走行距離などの品質の表示が販売店に義務付けられています。
その表示を義務づけているのが自動車公正競争規約です。表示すべきことを表示しない、という状態は、買う側から判断材料を奪っていることになります。
4. 責任を負わなくてよい部分 ― 自然損耗
一方で、すべての不具合が販売店の責任になるわけではありません。ここも押さえておく必要があります。
中古自動車は新車と異なり、前使用者の使用状態や経年によって、相応の機械疲労(自然損耗)があることは一般常識として知られています。このことからユーザーは、中古自動車には自然損耗が原因となる不具合が生じる可能性があることを承知して中古自動車を購入していると見做されます。
よって、特に販売店が保証している場合以外は、通常の自然損耗による不具合について販売店は責任を負う必要がないことになります。
だから論点は常に「これは自然損耗の範囲か、それとも契約に適合しない不具合か」になります。次の章がその線引きです。
5. 現状渡しでも消えない責任 ― 契約不適合責任
ここが本記事の核心です。
中古自動車に当然予想される通常の自然損耗とはいえない不具合があり、販売店もユーザーもそれに気付かずに売買が行われ、後に不具合が発見されたときは、いくら現状渡し販売といってもその損害をユーザーに負担させることは不公平です。
そこで民法が用意しているのが、次の仕組みです。
・追完(修補)請求=直してくださいと求める
・代金減額請求=その分安くしてくださいと求める
・損害賠償請求
・売買契約を解除する権利
これは契約不適合責任といわれ、販売店がその品質が契約に適合しないことを知らなかったとしても責任を免れません。
「販売店も気づいていなかった」は、責任を免れる理由になりません。知らなかったとしても責任を負う——これが契約不適合責任の性質です。
そして、いくら現状渡し販売であっても、契約に適合しない不具合については売主の契約不適合責任に基づき販売店は無償修理などに応じなければなりません。
契約不適合責任そのものの内容(解除まで認められるのはどんなときか等)は、納車された中古車が話と違う・故障している と 中古車の契約はいつ成立し、いつ解除できるのか で詳しく扱っています。
6. 「責任を負いません」と書いてあれば免れるのか
契約書に免責の文言があれば責任が消えるのか、という点についても、歯止めが用意されています。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 割賦販売法施行規則 | 契約約款の基準として「商品に隠れた瑕疵がある場合に割賦販売業者が当該瑕疵について責任を負わない旨が定められていないこと」と規定して消費者の保護を図っています |
| 消費者契約法 | 一定の場合に事業者の損害賠償等の責任を免除する条項の無効が規定され、消費者に不当な負担を強いることを防止しています |
そのため、消費者契約法において事業者の損害賠償等の責任を免除する旨の規定は無効となる場合があり、販売店は現状渡し販売においてもこの責任を避けることはできませんとされています。
ただし、これは「書いてあることが常に効かない」という意味でもありません。実際の結論は、その不具合が自然損耗の範囲か、表示・説明があったか、条項の書きぶりはどうか、といった事情によって判断されます。
7. 現状渡し販売として認められるための2条件
では、販売店が現状渡しで売る場合に何が必要か。ここは買う側のチェックポイントにもなります。
① 販売時に自動車公正競争規約に基づいて品質表示を適正に行うこと
② 現状渡し販売の取引形態であることをあらかじめユーザーに説明していること
が必要です。
逆に言えば、品質表示もない、現状渡しであるという説明もないまま「現状販売だから」と言われても、それは前提を満たしていないことになります。
8. JUモデル注文書はどう定めているか
実際の契約書(注文書)の条項も見ておきます。JUモデル注文書「中古自動車の不具合と保証」についての条項は、以下のように定められています。
ただし、保証書が添付されている場合には、その範囲で保証が受けられるものとします。」
読むときの要点は2つあります。
- 異議を述べないとされているのは「書面に記載された使用の態様から通常生じる不具合」=書いてあることから予想できる範囲の話であること
- 保証書が添付されていれば、その範囲で保証が受けられること
つまりこの条項も、プライスボードや車両状態を表示した書面に何が書かれていたかを出発点にしています。表示と説明がすべての土台になっている、というのが一貫した構造です。
9. 買う側のチェックリスト
- 「現状渡し」であることを、契約前に説明されたかを確認する。あとから言われるものではない
- プライスボード・コンディションノート・特定の車両状態を表示した書面に、どんな不具合が書かれているかを読む。書かれていない不具合が後で出た場合が、まさに本記事の論点
- 不具合が出たら、まず「契約のときに説明を受けたか」を思い出す。説明を受けていないなら、現状渡しという言葉だけで諦めない
- 自然損耗なのか、契約に適合しない不具合なのかは症状・走行距離・経過期間によって判断が分かれます。話し合いが平行線なら第三者に相談する
- そもそも説明してから売る販売店を選ぶのが最大の予防策。愛知県内であれば JU愛知の適正販売店 が目安になります
現状渡しという売り方そのものは、買う側が状態を理解したうえで安く買うための選択肢として意味があります。問題になるのは、その前提である表示と説明が抜けたときです。買う前に聞く、聞いたことを書面で残す——この2つで、多くのトラブルは避けられます。