買った中古車が「走行メーター巻戻し」だった
― 返金は受けられるのか、使用料は取られるのか
この記事のポイント(要約)
1. 相談内容
相談① 自動車を販売店に引取ってもらい、売買代金の返還を受けられるでしょうか。また、損害賠償を請求することができるでしょうか。
相談② 巻戻しが判明したのは最近だったため、すでに購入後1年経過し1万km乗っていました。販売店が「相談①」の要望に応じることになった場合、この1年間の使用料を請求されるのでしょうか。もし請求されるとしたら、どのように算定されるものなのでしょうか。
2. 回答
相談① ― 契約解除・代金返還・費用の賠償を請求できる
メーターの巻戻しによって実際は6万kmの走行経歴を持っていたという契約内容の不適合箇所がこの自動車にはあり、かつユーザーは3万kmしか走っていない品質、性能をその車に期待するという契約の目的を達することができません。
したがって販売店は契約不適合責任(旧法:瑕疵担保責任)を負い、ユーザーから契約を解除され、代金の返還ならびに登録の費用や保険料をユーザーが支出しているときはそれらの賠償を請求されることになります。
なお、ユーザーは錯誤による契約の取消しを主張することもできます。
相談② ― 1年分の使用料は「当然に取られる」わけではない
メーター巻戻しの事実を知らないで自動車を買ったユーザーは、錯誤による取消し、販売店がメーター巻戻しを知っていてユーザーをだまして販売していた場合には詐欺による取消しを主張し、自動車を返して代金の支払いを免れることができます。
そして取消しをしたユーザーは、民法121条の2によって、代金の返還を請求する権利を取得すると共に、「相手方を原状に復させる義務」を負います。そのため、ユーザーは自動車を返還する必要があります。
・返還を肯定する裁判例・判例がある一方、
・「善意の占有者は、占有物から生じる果実を取得する」と定めた民法189条1項などの規定を根拠に、返還義務を否定する裁判例も存在します。
そのため、事案によってはユーザーに対する使用料などの返還請求が認められることもありえますが、請求ができるか否かは慎重な検討が必要です。
特に、錯誤取消や詐欺取消などの原状回復義務を定めた民法121条の2の規定には、受領時から利息や果実を返還する義務を定める規定がありませんので、極めて慎重な検討が必要となります。
3. 解説
メーター巻戻しは「契約不適合責任」にあたる
メーターの表示が過去の実際の走行距離と合致しているかどうかは、通常人が容易に知り得ることではありません。
このように、売買の対象となった特定物に、契約内容とは異なる欠陥・不具合があった場合に販売者側が負う責任を、「契約不適合責任」といいます。
売買の対象となった特定物に不具合等があり、それによって契約をした目的を達成することができないとき等には、買主は契約を解除し代金の返還を売主に求めることができます(旧法:瑕疵担保責任)。
メーターの巻戻しによって本当の走行距離が隠された自動車では、偽りのメーター数が表しているような性能、価値を持つことができません。また、メーターの巻戻しに気が付かなかったユーザーに不注意があったということもできません。ですから、メーターの巻戻しが発見された場合には、買主は代金減額請求、契約解除・代金返還請求などができるのが原則といえます。
錯誤
自動車の売買契約に「錯誤」があった場合、錯誤に陥って契約した当事者は契約の取消しを主張することができます(民法95条)。錯誤とは、それがなかったら契約締結をしないのが通常であろうと考えられる程度の重要な契約内容についての思い違いのことをいいます。
自動車の走行距離は性能、価値を表す重要な指標ですから、それについての思い違いは錯誤に当たるといってよく、巻戻されたメーターの表示によってその自動車の実際の走行距離を思い違いしたユーザーは、契約の取消しを主張できることになります。
4. 買う側へのアドバイス
- 契約前に車検証・定期点検整備記録簿を見せてもらい、過去の入庫時点の走行距離とメーター表示の流れに矛盾がないかを確認する
- 走行距離は書面(注文書・コンディションノート等)に記載してもらう ― 後から争いになったとき、書面が決め手になります
- おかしいと気づいたらすぐ販売店へ申し出る ― 契約不適合責任の請求は原則として知ってから1年以内
- 返金交渉になった場合は、使用料の扱いで意見が分かれることがあります。この点は裁判例が固まっていないため、金額の提示を受けたら根拠を確認し、必要なら専門家に相談してください
- 販売店選びの段階で予防する ― 愛知県内であれば、業界団体の研修を受け、規約に沿った表示を行うJU愛知の適正販売店が目安になります