「経営に活かせる意見の集め方」
― 全店対象研修(令和6年度・第4弾)。そのアンケート、何のために取っていますか
この記事のポイント(要約)
「うちのアンケート、機能しているか」から始まる
研修は、受講者それぞれが自店のアンケートを思い浮かべるところから始まりました。
多くの店がアンケート用紙を持っています。しかし、集めた紙がその後どう使われているかまで説明できる店は多くありません。中島講師が投げかけたのは、「そのアンケートは、お客様の声を経営に生かす手段として本当に機能しているか」という問いでした。
アンケートは、取ること自体が目的になりやすい書類です。回収率だけを追いかけると、集まった内容は誰にも読まれずに保管されます。研修の狙いは、この状態から抜け出して情報を「収集する」から「抽出・分類して使う」へ切り替えることに置かれました。
経営資源としての「情報」― 2種類ある
中島講師は、店が持つべき情報を大きく2つに分けて説明しました。
- お客様情報 ― 何を期待して来店したのか、どこに満足し、どこに引っかかったのか。
- スタッフ情報 ― 現場で何に困っているのか、何ができるようになったのか。
どちらも普段は誰かの頭の中にあって、店として共有されていないことが多い情報です。これを見える形にする手段としてアンケートを位置づけ直す、というのが今回の骨子でした。
設問設計 ― 「ニーズチェックで分かること」は書かせない
具体的な注意点として挙げられたのが、設問に何を入れるかです。
接客の中のニーズチェック(ヒアリング)で聞き取れる内容は、アンケートの設問に含めない。ここを分けないと、お客様は同じことを二度聞かれ、店側も既に知っている情報を紙で集め直すことになります。
アンケートで取るべきは、面と向かっては言いにくいこと、接客の場では出てこない本音の側です。まず「このアンケートで何を知りたいのか」を決め、そこから逆算して設問を作る ― 戦略的に使うとは、この順番のことだと説明されました。
依頼するタイミング ― 商談成立の直後、書類を作っている時間
実務として最も具体的だったのがここです。
- 最適なのは、商談が成立した直後の書類作成の時間。 お客様に手が空く時間が生まれ、気持ちも前向きなタイミングです。
- 避けるべきは、帰り支度を始めたタイミング。 「早く帰りたい」状態で渡された紙は、丁寧に書いてもらえません。
同じ用紙でも、渡す瞬間が違うだけで戻ってくる内容の質が変わる、という指摘です。アンケートの中身を練り直す前に、まず渡し方を見直したほうが早い店は少なくないはずです。
スタッフ育成にも使う ― 週1回の自己分析アンケート
アンケートの対象はお客様だけではありません。中島講師が勧めたのは、スタッフ本人に書いてもらう自己分析アンケートです。
実施は毎週、休業日の前。これを3か月続けると、本人が自分の成長を実感できるという組み立てです。上司から評価を伝えるのではなく、自分で書いた記録が積み上がることで変化が見えるようにする点に特徴があります。
人手不足のなかで採用と定着に苦しむ店にとって、育成を仕組みとして回す一つのやり方といえます。
ハイライトは「論理脳ドリル」3連発
研修が最も沸いたのは、アインシュタイン式『論理脳ドリル』のワークでした。
第1問はスイスへ行った人物を特定する論理パズル、第2問はポルシェを買った人物を導く条件付き推論。5×3の乱数表を使う第2問では、「左隣」と「左」、「右から2番目」と「右から2つ隣」の違いを正確に読み取る必要があり、受講者は四苦八苦。最終問題は5×5の乱数表を使わないと解けない難問で、多くが悪戦苦闘しました。
盛り上がりぶりに中島講師自身が驚き、予定していたアンケート作成のワークを宿題に回したほどです。一見遊びに見えるこのワークが伝えていたのは、情報は集めただけでは答えにならず、整理して初めて意味を持つということでした。条件を並べ替え、関係を突き合わせる ― アンケートの分析も同じ作業です。
販売店にとっての読みどころ
- アンケートは回収率ではなく、使い道から設計する。 何を知りたいかが先。
- ヒアリングで分かることは設問に入れない。 二度手間はお客様の負担になる。
- 渡す瞬間を変えるだけで質が上がる。 商談成立直後の書類作成中がベスト、帰り支度中は避ける。
- スタッフにも書かせる。 週1回・3か月で成長が見える形にする。
中古車を買う側から見れば、買った後に「どうでしたか」と聞いてくる店は、次に何かあったときにも話を聞いてくれる店です。JU愛知の加盟店は、お客様の声を集めて店の運営に戻す取り組みを、研修を通じて学び続けています。